社会心理学3. The Self:自己
The self-concept(自己概念)
自らが自己を対象(客体)として把握した概念。
自分の性格や能力、身体的特徴などに関する、比較的永続した自分の考え。
自己観や自己像、自己イメージも同義に扱われることがある。
自己概念は、自己観察や周囲の人々のその人に対する言動や態度、評価などを通して形成される。
(子猫の遊び場)
- 個人の自身の特性に関する思想全般
- Multifaceted Self(selfに関する多面性)
- 自分の思う自分と、自分が、他人が思ってると思う自分など
- self-schema(自己スキーマ)
- 「自分とはどういう人間であるか」という自己の諸属性に関する知識。
- 何がselfを社会的概念にするのか?
- 人間は社会的ないきものであるから、周りに人がいなくてはいけない
self-concept (自己概念)の5つの出所
- introspection(内観)
- 自分自身の行動に対する知覚
- 他人の影響
- autobiographical memory(自伝的記憶)
- 文化
self-conceptのソース1.introspection (内観)
- 自己に関する知識はintrospectionによって得られる。
- 自身の中にある考えや感情を見つめること
- 自分を知るためには、必ずしも他人にもみえるように自分の本音や感情を行動に出す必要はない.なぜなら,self-conceptと行動自体とは直接関係ないから.
- しかし,かといってintrospectionで自己に関する全ての知識を知り得はしない
- 議論1:''Wilson (2002) による研究''
- attitudeがそのままself-conceptを写したものであるならば、行動にでるすべてのattitudeの理由を説明できるはずである。という考えより、
- 参加者に、適当にひとつのモノを選ばせ、なぜそれを選んだのかを聞く。するとほとんどの人が特に理由を見つけられなかった。
- because we have limited amount of resource, and have to choose important one, like graduation.(cognitive miser)
- attitudeがそのままself-conceptを写したものであるならば、行動にでるすべてのattitudeの理由を説明できるはずである。という考えより、
- 議論2:''Kruger & Dunning (1999)による研究''
- Better-than-average effect
- 自分は平均よりも「幸せだ」「頭がいい」などの質問を参加者にしたところ、現実的には半分は平均以下になるはずであるが、圧倒的多数が平均以上と答えた。よって、人は、自分自身について正確に評価出来ているとは言えない。
- Better-than-average effect
- 議論3:''Wilson & Gilbert(2003, 2005)による研究''
- affective forecasting:
- 将来、自分がある状況に対してどのように感じるかと言うことを予測
- テストで悪い点をとったらどう感じるだろうか。と言うことに対し多くがネガティブに予測するが、それはそのひとつの事柄にだけ焦点を当てているからである。例えばその日に臨時収入があったり、昇進があったりなどという事と重なれば、必ずしもその時の感情はネガティブとは限らない。
- impact or durability bias
- ある感情の持続時間を過剰に予測する傾向がある。
- 例えば大きな地震で家を失ったとして、どれだけの期間辛い思いをし続けるか。などということ。
- なぜ?
- どれだけcoping mechanisms(対処メカニズム)があるかを理解していないから
- ひとつの事象に焦点を当てすぎて、他の事象を無視してしまっているから。
- affective forecasting:
self-conceptのソース2.自分自身の行動に対する知覚
- ''Daryl Bemの研究''(1972)
- self-perception theory (自己知覚理論)
人は自分の行動やそれぞれが生じた状況を観察することによって、自分自身の内的状態(態度・感情・動機の強さ)を知ることがある。自分を理解する手がかりが乏しいような状況で、自分の取った行動から自分をわかる、という説。
(子猫の遊び場)
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- 知らないウチにイライラしていたことを、自分の顔が熱くなることで気づいたり。
- 限界:強制的な状況的圧力(rewards and punishments)
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- 感情の自己知覚
- facial feedback hypothesis(顔面フィードバック仮説)
- 表情の変化が感情の変化を引き起こすという仮説
- モチベーションの自己知覚
- overjustification effect (過正当化効果)
- 自己決定に基づく学習など内発的に動機づけられた行為に対して、報酬を与えるなど外発的動機づけを行うことによって、動機づけが低減する現象。
- overjustification effect (過正当化効果)
- facial feedback hypothesis(顔面フィードバック仮説)
self-conceptのソース3.他人の影響
- ''Leon Festinger(1954)''
- social comparison theory(社会的比較理論)
- 人々が、他人と比べることによって自身を評価するという仮説
- 自分と似たようなレベルの人を比較対象にする。芸能人や天才科学者などとは比べない。
- ''Schacter(1959)''
- 感情に対して不確かなとき、人は仲間を求める
- 実験で、強い電気ショックと弱い電気ショックを受けるふたグループに分け振られたとき、動揺する強い電気ショックを受けると宣告された人々同士で仲良くなる。
- 感情に対して不確かなとき、人は仲間を求める
- two-factor theory of emotion(2要因説)
- 感情は以下の二つの要因を元とする
- psychological arousal (唾液など)
- cognitive interpretation of that arousal (笑顔など)
- Caveat - その喚起は状況によって全く異なったように働く
- 普通の道と、危ない橋の上で綺麗なお姉さんが男の人にアンケートをとり、「後日更に詳しいものをやるので、宜しければ電話をください。」と連絡先を教えると、危ない橋を渡っていた人のほうが多く連絡を入れてくる。これは、危ない橋を渡っているという喚起を、参加者は綺麗なお姉さんに話しかけられた。という事による喚起と混合したため。
- ただし、過度な喚起では(例えば橋が落ちて死にそうになったなど)逆効果になる
self-conceptのソース4.autobiographical memory(自伝的記憶)
自分自身に関する事柄についての記憶である。自分が幼いころのことを覚えているのは、自伝的記憶が働いているためである。 エピソード記憶の一部。
- autobiographical memoryはselfに欠かせない。なぜなら、現在と過去をつなぎ、連続した内部の感覚を提供するため。
- すべてのautobiographical memoryは以下の点で異なり得る
- recency
- reminiscence peak(大きなイベント)
- transition periods
→卒業式などの大きな行事や、最近の出来事は、ほかの日常のデキゴトよりも鮮明に覚えている可能性が高い
- autobiographical memoriesは、selfの影響で書き換えられる
self-conceptのソース5.文化
- individualism(個人主義)
- 子供は、独立的、自律的、主張的に育てられる
- それぞれの特徴によってselfは認識される
- collectivism(集産主義)
- 子供は、グループやコミュニティに適応するように育てられる
- 仲間意識によってselfは認識される
self-esteem(自尊感情)
- 人のポジティブやネガティブな自己評価を含む、selfの感情的な要素。
自己に対するに対する評価感情で、自分自身を基本的に価値あるものとする感覚。
自尊感情は、その人自身に常に意識されているわけではないが、その人の言動や意識態度を基本的に方向付ける。
自分自身の存在や生を基本的に価値あるものとして評価し信頼することによって、人は積極的に意欲的に経験を積み重ね、満足感を持ち、自己に対しても他者に対しても受容的でありうる。
このような意味において、自尊感情は精神的健康や適応の基盤をなす。
(仔猫の遊び場)
- 高い自尊心を持つ人は、人に責任をなすりつける傾向がある。
self-discrepancy theory(セルフ・ディスクレパンシー理論)
人が感情的に苦しんだり悩んだりするのは、現実の自分についての理解の内容それ自体が問題なのではなく、様々な自己理解相互の関係の問題である、という点からスタートする。
そして、自己領域(現実自己、理想自己、当為自己)と自己についての視点(自己、重要な他者)の組み合わせによって分類し、それらの間のズレと感情の問題を結びつけたモデルである。
基本的前提は、人は現在の状態と自己指針の差異を縮小するように動機づけられる、というものである。
どのような自己指針を設定するかは、個人や状況によって異なる。
自己間の差異は、自己指針のタイプによって、異なる否定的心理状態と結びついている。
まず、現実自己と理想自己の差異は、理想や願望が達成されておらず、よい結果が欠如している状態を表している。
したがって、そこから悲しみや失望、不満足など失意落胆に関連する感情が生じる。
そして、現実自己と当為自己との差異は、義務や責任だと感じていることを実現できていないことから、悪い結果が生じることを表し、何らかの制裁と結びつきやすく、恐怖や緊張など動揺に関連する感情が生じる。
セルフ・ディスクレパンシー理論は、個人や状況によって動機づけや経験される感情の違いを、目標指針としている自己像と、現在の自分への理解とのズレによって説明しようとするものである。
(仔猫の遊び場)
- ''Higgins (1989)''
- Actual self: how you actually view yourself
- Ought self: Howe you wish you were
- これらの二つの差が大きければ大きいほど、self-esteemは低くなり、逆に差がなくなればなくなるほど高くなる
The self-awareness "trap"
- 人は日々どれだけの時間、selfについて考えることに費やしているか。
- self-focusing situations
- self-awareness theory(自覚理論)
- 自分にフォーカスが当たる状況で人はセルフ・ディスクレパンシーに気づき、逃げるか、行動を変えるかの二択を迫られるという理論
- self-focusing persons
- private self-consciousness
- 主に自分の内的状況に注意を払う、内観的な人格
- public self-consciousness
- 自分を他人目線で社会的物質だと捉え、相手に応じてあわせて変わる人格
- 他人を基準に考える
- self-awarenessはself-focusing person、self-focusing situationsによって引き起こされ、actual selfとought selfとを比較する。
- その差を減らそうと試みにhighly成功した場合は基準に行動を合わせることに成功し、低い場合は自覚を諦める
self-regulationとその限界
- 人が考え、感情、行動などを管理したり変えようとするための過程
- ''Muraven & Baumeister (2000)''
- すべてのself-controlの努力はひとつの資源から得られる(関連:cognitive miser)
- self-controlを行うことは、筋トレをするようなもの。よって、一度使われたら回復するまでは再び使うに耐え難い。
- ''Vohs & Heatherton (2000)''
- 参加者は女子大生、subject variableはダイエット中かそうでないか
- independent variableは退屈なビデオを見させ、隣にお菓子をおいて強い誘惑を与えたか与えてないか。
- dependent variableは、映画のあとにアイスクリームを出して、どれだけ食べるかどうか。
- →結果、ダイエット中で、かつお菓子をおいて強い誘惑を受けた女子大生が一番アイスを食べた。
- 多くのself-regulationを受け続けた事に対する反動で。
self-presentation
- 他人が自分のことをどう思うかと言うことをはっきりさせるためのストラテジー
- strategic self-presentation(方略的自己呈示)
自己概念の社会的な面、他者に対して自分をどのようにみせるかに対する意識。
-
- 影響や、力、同情や同意を得るための印象を作るための努力
- ingratiation (ご機嫌取り)
- 他人と仲良くやり、気に入られるため
- self-promotion(自己宣伝)
- 目上の者、あるいは権威を持つものに対して気に入られるため
self-enhancement
- 自分自身をすごいと思うように、周りの人にもすごいと思ってもらいたい人の持つ傾向
- implicit egotism (潜在的自己中心性)
- 無意識のウチのself-enhancement
- 例えば、人は名前に使われているアルファベットをこの無傾向がある、など
- 無意識のウチのself-enhancement
- 潜在的自己中心性 (implicit egotism; Pelham et al, 2005)
- ポジティブな潜在的自尊心が意思決定に影響を与えることによって、自らと関連性のある場所(自分の名前に似ている地名)・もの(自分の名前に似ているブランド名)に心ひかれやすくなる。
- ''Brendl et al. (2005)''
- 自分の名前に似ているブランドを好む傾向(name letter branding)が特に強くなるのは、自我脅威にさらされたときや、自らの感情に注意を向けているとき、そして商品に対応した欲求が高まっているとき(e.g. 空腹で食欲が高まっているときに食品に対するname letter brandingが生じる)。
- 潜在的自尊心と親密な対人関係 (Implicit Self-Esteem and Close Relationship)
- 潜在的自己中心性は、対人関係における選好にも影響する。
- 人は自分と名前が似ている相手を好みやすい(Jones et al., 2004)。
- 潜在的自尊心は、親密な関係にある他者に対する潜在的評価に影響する。
- 潜在的自尊心の高い人は、親密他者に対する潜在的評価も高い(DeHart et al., 2007)。
- 対人関係の良好さが健康的行動におよぼす影響も、潜在的自尊心が調整する。
- 潜在的自尊心の高い大学生は、良好な対人関係を経験するほど、その夜の飲酒量が多かった。逆に、潜在的自尊心の低い大学生は、否定的な対人関係を経験するほど飲酒量が多くなった(DeHart et al., 2006)。
(The Self 読書会)
self-enhancementのメカニズム
- self-serving bias(自己奉仕バイアス)
自分の成功は自分の能力や努力などの内的要因に、自分の失敗は運や課題の困難さなどの外的要因に帰属させやすい傾向のこと。
成功の内的要因への帰属を自己高揚的帰属、失敗の外的要因への帰属を自己防衛的帰属として区別することもある。
自尊心の維持、高揚の動機づけによって生じるものであり、特に自分にとって重要な課題を遂行する場合に顕著となるとされる。
(仔猫の遊び場)
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- 成功=dispositional inference(属性推論)
- 失敗 = situational inference(状況推論)
- ''Kunda (1987)''
- 若者の80%は幸せな結婚生活を送ると信じている。一方で、現状は50%以上の離婚率
- self-handicapping(自己ハンディキャッピング)
ある課題を遂行する際に、その遂行結果の評価的な意味をあいまいにするために、課題遂行の妨害となる障害を自ら作り出す行為のこと。
その課題遂行に失敗した場合には、失敗がその障害のためであると自己の能力の欠如に対する帰属が割り引きされ、成功した場合には障害があったにもかかわらず成功したと自分に対する帰属が割り増しされることを目的としている。
重要な課題遂行に関して成功の確信が持てない場合にとられやすい。
セルフ・ハンディキャッピングとしては、アルコールの摂取、困難な状況の選択、努力の低下、また不安や病気の主張などが指摘されている。
(仔猫の遊び場)
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- 失敗するのが怖いが故に、あらかじめ失敗を正当化するハンディキャップを作っておく。(昨日勉強全然しなかった。今日朝勉強始めた、など)
- downward social comparisons
- 自分よりもダメな人と比べることで正当化する防衛傾向
- sand-backing
- e.g: 事前に色々な理由をつけて自分に対する期待を下げておいて、結果を出すことによって強い賞賛を得る方法(マジ勉強してない!(ホントはしたけど)→テスト満点)
self-verification
- 他人にも自分が思っている自分自身を知って欲しいと言う願望
- Romantic relationships
- e.g. dating v. marriage: 結婚したら、素の自分も見て欲しい
おさらい
- self-esteem: 自分自身に対する、自分は価値がある存在だという評価
- strategic self-presentation: 自己概念の社会的な面、他者に対して自分をどのようにみせるかに対する意識
- self-enhancement (自己高揚): 人は、自己概念の肯定性を増大させ、自己概念を否定的情報から守るように動機づけられている。人は、高レベルの自尊心への到達手段として、自己の肯定性を増大させ、否定性を減少させることに関心を持つ。
- self-verification (自己確証): 安定的な自己概念を形成・維持するために、既存の自己概念を確認・確証しようとする傾向。
人は自己概念と新しい自己関連情報との一貫性を維持するように動機づけられている。自己確証は、しばしばカオス的になる社会環境の中で、コントロールと予測可能性の感覚を促進する。